英国陸軍 マークI戦車(Mark I tank)「雄型(Male)」


第一次世界大戦最中の西部戦線における、塹壕と機関銃の圧倒的優位を打破するために誕生した世界初の近代的な実用戦車である。
ウィリアム・トリットン、ウォルター・ゴードン・ウィルソンが設計を担当し、製造はウィリアム・フォスター社が行った。その形状から菱形戦車とも呼ばれる。
イギリス陸軍のアーネスト・スウィントン中佐は、アメリカのホルト社(現キャタピラー社)が実用化に成功した無限軌道(キャタピラ)トラクターをヒントに、これに装甲を施した戦闘室を搭載した戦闘車輌を着想する。
このアイディアは陸軍では却下されてしまうが、海軍が関心を持ち、超壕兵器「陸上軍艦(Landship)」の開発が始まった。
マークIのデビュー戦は、1916年9月15日のソンムの戦いにおける第3次攻勢となった。
三個戦車中隊の計60輌のマークIが投入を予定していたが、輸送時のトラブルや移動中の故障から脱落する車輌が相次ぎ、攻撃開始地点にたどり着いたのは32輌のみと、半数にまで減っていた。
また、前進を開始するとエンジントラブルや砲弾孔に落ちて破損するなどの問題が発生し、従来の作戦通り歩兵を先導して敵陣地に突撃できたのはわずか9輌だけだった。だが、有効な対抗兵器を持たない前線のドイツ軍兵士は、鉄条網を超えて進んでくる謎の新兵器にパニックに陥った。この日の戦いで、イギリス軍は目標としていたフレール一帯の丘陵地帯の占領に成功する。それでも、長大な戦線からすれば、投入した車輌の数の少なさから効果は一部に留まってしまい、何より戦車の信頼性の低さが問題となった。
だが、戦車という兵器の研究・開発は各国で進められることになる。
マークIは菱形の車体で、泥地の塹壕でも乗り越えられるだけの低い重心と履帯を備えている。車体前面に車長・操縦手の為のキューポラがそれぞれ張り出し、車体側面には「スポンソン」と呼ばれる張り出し砲郭が設置されている。現行の主力戦車と比べてまったく異なる形状・武装・装甲であるが、これは戦車に敵陣地・塹壕・鉄条網を突破し、歩兵進撃を支援することが第一に求められていた為である。
マーク Iの武装は、左右の車外側面に張り出した砲郭(スポンソン)が設置され、このスポンソンに、オチキス QF 6ポンド(57mm)砲2門(他に、副武装としてオチキス .303(7.7mm)空冷式軽機関銃3挺)を搭載する車輌が「雄型(Male)」、主武装にヴィッカース .303(7.7mm)水冷式重機関銃4挺(他に副武装としてオチキス .303(7.7mm)空冷式軽機関銃1挺)を備えた車輌が「雌型(Female)」、と呼ばれる。
製作:Rn工廠
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